サステナビリティ辞典DICTIONARY

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AIP

Aquaculture Improvement Project(養殖改善プロジェクト)の略。漁業者、サプライチェーン上の企業、NGOなどが協力して、持続可能かつ責任のある養殖業の確立をめざす組織的な取り組みで、一般的にはASC認証の取得を目指します。まず現状の課題を特定し、課題解決の計画を作成し公表します。その後は定期的なモニタリングを通じて計画の見直しと調整を繰り返しながら改善を進めます。*1

ASC認証

国際的な非営利団体、Aquaculture Stewardship Council(水産養殖管理協議会)の運営する養殖水産物の認証制度。GSSIの認定も受けています。養殖水産物が社会的、環境的要素に配慮し、責任ある方法で育てられ、漁獲されたことが証明された養殖水産物にのみ認証が与えられます。*1

BAPエンドーサー

持続可能な養殖水産業の実現に向けて、BAP認証水産物を販売促進または購買支援する企業のこと。ウォルマートを筆頭に、世界で150社以上の小売企業、流通企業などが参加しています。*1

BAP認証

Best Aquaculture Practices 認証の略。国際的な非営利団体、Global Aquaculture Alliance (世界水産養殖同盟)が運営しています。責任ある養殖産業における環境、社会、動物福祉、食品の安全性ならびにトレーサビリティに関するもっとも重要な要素を満たす水産物のみに与えられる養殖認証制度です。GSSI、GSCP、GFSIの認定も受けています。*1

CoC認証(加工・流通段階認証)

製品の製造・加工・流通の全ての過程において、認証水産物が適切に管理され、非認証原料の混入やラベルの偽装がないことを担保する認証。CoC認証を取得していない事業体に一度でも所有権が移ると、それ以降、認証製品として取り扱うことはできなくなるため、認証製品の管理においては、購入・製造・保管・販売などの各工程において、他の製品との明確な識別、帳票上での明示、記録の保管などが求められます。MSCとASCは共通のCoC認証、MELは独自のCoC認証をもちます。*1

CSR

Corporate Social Responsibility(企業の社会的責任)の略、ソーシャル・レスポンシビリティ。企業が倫理的観点から事業活動を通じて、自主的(ボランタリー)に社会に貢献する責任のこと。企業の社会対応力とも言われています。近年、ESG投資の観点などからも企業のCSR活動には大きな注目が集まっています。*1

CSV

Creating Shared Value(共通価値の創造)の略。企業が、社会ニーズや問題に取り組むことで社会的価値を創造し、その結果、経済的な価値も創造されること。CSRと比較してCSVは事業戦略そのもので社会的価値を創造する融合的な概念を意味します。*1

ESG投資

Environmental(環境)・Society(社会)・Governance(ガバナンス)投資。社会的責任投資ともいう。各分野への適切な対応が会社の長期的成長の原動力となり、最終的には持続可能な社会の形成に役立つことを示した投資の判断基準の一つとされています。一般的に財務リターンが高く、投資リスクが小さいことから、近年注目を浴びています。*1

EU・HACCP(対EU・HACCP)

EUの求めるHACCPに対応すること。EUは魚介類について生産から加工・流通、輸出までのフードチェーン全体での管理(HACCP)を義務付けています。そのため、日本から製品を輸出する加工施設等は、水産庁または都道府県(あるいは県水産部局)による認定を受け、衛生証明書を取得する必要があります。輸出にはそのほかに、産地証明書と放射性物質検査証明書も必要となります。*2

FAOガイドライン

持続可能な水産物とそうでないものを区別する、という認証制度の上位概念としてあるのが、2005年に国連のFAO(世界食糧農業機関)の発表した「水産エコラベルのガイドライン」です。このガイドラインでは認証制度が守るべき規範を示しており、法的拘束力はないものの、これを参考にした格付け・認証制度が多く存在しています。*1

FIP

Fisheries Improvement Project(漁業改善プロジェクト)の略。漁業者、サプライチェーン上の企業、NGOなどが協力し、持続可能性な漁業の確立をめざす組織的な取り組み。一般的にはこの取り組みを通してMSC認証の取得を目指します。まず現状の課題を特定し、課題解決の計画を作成し公表します。その後は定期的なモニタリングを通じて計画の見直しと調整を繰り返しながら改善を進めます。北米では大手小売企業のうち約3分の2の企業がFIPに対して積極的な支援を公約しています。*1

Global G.A.P.

野菜などの一次産品に対する認証。G. A. P(Good Agricultural Practice、農業生産工程管理)は、食品安全、環境保全、労働安全等の持続可能性を確保するための生産工程管理の取組*3のことです。GLOBALG.A.P.(グローバルギャップ)認証とは、それを証明する国際基準の仕組みです。認証取得生産者数はヨーロッパが多数を占めていますが、日本の小売業でも本認証を取得した生産者から調達するようになっています。*4

GFSI

Global Food Safety Initiative (世界食品安全イニシアチブ)の略。世界的な食品の流通、製造のネットワークであるThe Consumer Goods Forum(TCGF)が、世界の食品安全管理システムの継続的な改善のために2000年に発足したイニシアチブです。製造業、食品サービス業、認定・認証機関、食品の安全に関する国際機関のほか、欧米系大手小売業も参加しており、GFSIによる認定は流通において大きな影響力をもちます。*5

GSCP

Global Social Compliance Program(世界社会コンプライアンスプログラム)の略。世界的な食品の流通、製造のネットワークであるThe Consumer Goods Forum(TCGF)が、世界のサプライチェーンにおける社会と環境を改善するための既存の取り組みを、より効率的に行うために2006年に発足したイニシアチブです。世界の大手小売業、テクノロジー企業、アパレルなどの消費財製造業、NGOなどが参加しています。*6

GSSI

Global Sustainable Seafood Initiatives(世界水産物持続可能性イニシアチブ)の略。各国の水産企業や非政府組織などが参加する枠組みで、段階的で透明性のあるプロセスを経て、FAOのガイドラインを満たす水産物の認証スキーム(「責任ある漁業のための行動規範」「水産エコラベル・ガイドライン」)に対してお墨付きを与えるグローバル・ベンチマーク・ツールの役割を果たしています。2020年の東京五輪の調達コードにも盛り込まれ、日本でも注目されています。*1

HACCP

Hazard Analysis Critical Control Point (危害要因分析重要管理点)の略。各原料の受入から製造、製品の出荷までの全工程において、食中毒の原因菌や金属片など健康被害を引き起こす可能性のある危害要因(ハザード)を分析し、その防止につながる重要な工程を継続的に監視・記録する工程管理システムです。最終製品だけでなく全工程が管理されるため、問題のある商品の出荷を防いだり、問題発生時はその原因を追求し改善につなげることができます。2019年に改正食品衛生法が公布され、原則全ての食品等事業者はHACCPに沿った衛生管理に取組むことになっています。*7

IUU漁業

漁業資源管理の枠組みを逃れて行われる、Illegal(違法)・Unreported(無報告)・Unregulated(無規制)漁業のこと。乱獲、混獲、人身売買、強制労働、洋上転載などを伴う漁業。乱獲や混獲は資源減少の一因となり、市場全体で巨額の損失を生み出しています。IUU漁業や奴隷労働に由来する水産物を扱うことは、企業にとってブランドイメージやCSR、信頼性を損なう大きなリスクとなります。EUおよび米国では、IUU漁業由来の水産物を市場に流通さないための規制が実施されています。*1

MEL認証

マリン・エコラベル・ジャパン認証の略。一般社団法人マリン・エコラベル・ジャパン協議会が運営しています。「持続可能な水産物」を「現在および将来の世代にわたって最適利用ができる様、資源が維持されている水産物」と定義し、資源と生態系の保護に積極的に取り組んでいる漁業に与えられる認証制度です。他の認証スキームは母体団体が海外なのに対し、MEL認証は日本発の認証スキームで、アジアで初めてGSSIの認定を受けました。*1

MSC認証

Marine Stewardship Councilの略。国際的な非営利団体、Marine Stewardship Council(海洋管理協議会)の運営する天然水産物の認証制度。「海のエコラベル」と呼ばれ、水産物が持続可能な漁業によって獲られたことを証明するものです。GSSIの認定も受けており、現在世界中でもっとも広く使われている水産物の認証制度で世界の漁獲高の約14%がMSC認証を取得しているとも言われています。*1

SDGs(持続可能な開発目標)

持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)の略。2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された2016年から2030年までの国際目標。17の目標と169のターゲットからなり、責任ある消費と生産、気候変動への対策、海の豊かさを守る、など水産資源とかかわる項目も多く設定されています。*1

SeaBOS

Seafood Business for Ocean Stewartship(海洋管理のための水産事業)の略。水産業界のキーストーンアクターと呼ばれる世界最大手の水産企業が協働することで持続可能で健全な水産業の実現を目指す取り組み。*1

エコラベル

その商品やサービスが環境に配慮されたものであることを示すラベル。「グリーン」や、その企業やメーカーが主張するラベルと比較すると、最も信頼性の高いラベルは、公平な第三者により、透明性があり環境分野の先進的基準を満たしていると認められたものにのみ与えられます。*8

エシカル消費

消費者が各自にとっての社会的課題の解決を考慮したり、そうした課題に取り組む事業者を応援しながら消費活動を行うこと。例えば対象が人である場合、障害者支援につながる商品、環境の場合、リサイクル商品やエコラベルのついた商品の購入が挙げられます。*9

オリンピックレガシー

人や街のためにオリンピックを開催したりオリンピック・ムーブメントを作ることで始まる、あるいは加速する無形、有形の長期的な利益*10のこと。スポーツ、社会、環境、都市、経済の5つの類型に分かれています。「史上もっとも環境に配慮したオリンピック」として注目された2012年のロンドン五輪では、大会期間中のみならず、期間後も認証水産物を推奨するムーブメントが形成され、現在も続いています。*1

海洋汚染

人類活動により海洋が汚染されること。国連海洋法条約(1982年採択、1994年発効)では原因を「陸からの汚染、海底資源探査や沿岸域の開発などの活動による生態系の破壊、汚染物質の海への流入、投棄による汚染、船舶からの汚染、大気を通じての汚染」と定義されています。*11

海洋酸性化

地球の温暖化により増加した空気中の二酸化炭素を海洋が吸収することで、海のpHが長期にわたって低下する(酸性化)こと。海水の表面だけでなく内部でも進行していると考えられています。サンゴ礁などの骨格や殻の形成阻害、それによる生態系の破壊などが問題となっています。*12

海洋プラスチックごみ

海洋に流出するプラスチックごみのこと。生態系に悪影響を及ぼすとして近年急速に世界各国で対策がなされています。廃棄されたプラスチックは分解に数百年かかると言われています。日本はプラスチックの生産量で世界第3位、1人当たりの容器包装プラスチックごみの発生量については世界第2位と、この問題に国際的な責任を持たなければならない立場にあります。*13

過剰漁業

持続可能とされる漁獲量を超えて漁業を行うこと。生態系のバランスが崩れ、資源の回復力が失われる原因となります。現在世界の水産資源の約30%が枯渇状態にあり、60%が限界のレベルで利用されています。*1

強制労働

人身売買などにより違法に連れてこられた労働者を奴隷のように働かせること。水産業においては、東南アジア諸国の水産業者らによる関与や、強制労働により生産された水産物が世界に広く流通していることが、近年の調査で明らかになりました。合法に生産された水産物とサプライチェーン上で混ざってしまうため、追跡は極めて難しいとされています。*1

混獲

漁業の際に目的外の魚や他の生物を漁獲または捕獲してしまうこと。魚に限らず、サメやウミガメ、そしてイルカなどの大型哺乳類や海鳥などが誤って網にかかってしまう事例が多く報告されています。認証取得においては、こうした混獲に関する対応も審査項目に含まれており、必要に応じて漁具の改善などを行う必要があります。日本では漁業報告義務事項に混獲情報が含まれておらず、国際的に疑問視されています。*1

サステナブル・シーフード

持続可能な、つまり将来に向け安定して活用し続けることのできる水産物。 サステナブル・シーフード推進の取り組みは「未来の世代に魚食を継承すること」とも言われています。自然環境や生態系だけでなく、社会的、経済的な面でも持続可能であることが必要で、生産者、流通加工業、小売業、飲食業、消費者それぞれの理解と参加が求められます。*1

サプライチェーン

商品の原料の生産現場から消費者の手に渡るまでの流通経路のこと。水産物は食品の中でも世界でもっとも貿易額が多い一方、生産現場が海上ということもあり、段階を追っての追跡が難しいとされています。水産物の持続可能性を担保するためにはトレーサビリティの確立された、透明性のあるサプライチェーンが必須となります。*1

水産エコラベル(認証システム)

ある一定以上の基準を満たした漁業や養殖業で生産される水産物のみに与えられ、持続可能なものとそうでないものを差別化する役割があります。こうしたエコラベルがついた商品を選ぶことで、消費者は間接的に持続可能な社会や水産業の形成に貢献することができます。*1

ステークホルダー

利害関係者。ある課題において直接的、間接的な繋がりを持つ個人や組織のこと。サプライチェーンを跨いでの課題や問題が多く存在する水産業界においては生産から小売まで、多くの水産関係者及び行政、NGOなどがステークホルダーとして協働していくことが求められています。*1

持続可能性

生物資源(特に森林や水産資源)の長期的に維持可能な利用条件を満たすこと。広義には、自然資源消費や環境汚染が適正に管理され、経済活動や福祉の水準が長期的に維持可能なことを意味します。サステナビリティ。*1

生物多様性

森林、海洋、干潟などの「生態系」、動植物や菌などの「種」、アサリの殻の縞模様など同種内の「遺伝」の3つのレベルにおける多様性のこと。1992年には生物多様性の包括的な保全と、生物資源の持続可能な利用のための国際的な枠組みである「生物多様性条約」がナイロビ(ケニア)で開催された合意テキスト採択会議において採択されました。*14

調達方針

スーパーマーケットなどの小売業や社員食堂などの飲食業が商品を仕入れる際に規定する条件や方針。例えば「ワシントン条約対象種は取り扱わない」「原料となる水産物の種の特定及び流通経路を追跡できる商品のみを取り扱う」「2020年までに自社ブランドの水産物の50%をMSCおよびASC認証の水産物に切り替える」など、取扱品の条件を規定するものです。日本でも小売業や外資系ホテルによるサステナブル・シーフードの調達が徐々に進められています。*1

トレーサビリティ

追跡可能性ともいう。商品の生産段階から流通、消費あるいは廃棄段階まで追跡(トレース)が可能なこと。責任ある漁業や養殖に由来する水産物であることを保証するためには、複雑な流通経路をモニタリングするトレーサビリティの確立が必要だが、中小事業者の費用負担や知識の不備、言語の問題、共通規格がないことなどハードルが多く残されています。環境負荷低減や水産資源管理のためだけでなく、世界的に大きな問題となっているIUU漁業や労働問題改善のためにもトレーサビリティの確立が期待されています。*1

未利用魚

魚体のサイズが不揃いであったり、漁獲量が少なくロットがまとまらないなどの理由から、非食用に回されたり、低い価格でしか評価されない魚のこと。近年こうした未利用魚の有効活用が各地で活発化しています。*1

洋上転載

漁獲した魚を洋上で運搬船に積み移す行為。漁船は漁獲した魚を冷凍運搬船に移すことで長い期間港に戻ることなく漁を続けることができるため、違法漁業や労働問題の観点から問題視されています。*1

乱獲

過剰に水産物を獲り続けること。資源の枯渇に繋がるだけでなく、違法漁業など多くの問題が背景にあるとされています。混獲の多く発生するトロール漁船なども特定の種以外を多く漁獲してしまうため、乱獲に加担してしまう場合があります。*1

  • *1(株)シーフードレガシー
  • *2水産庁「その他の対EU・HACCP関連情報」を基に作成
  • *3農林水産省「農業生産工程管理(GAP)に関する情報」を基に作成
  • *4GAP普及推進機構/GLOBALG.A.P.協議会を基に作成
  • *5一般財団法人食品産業センター「GFSI」を基に作成
  • *6United Nations Global Compact “The Global Social Compliance Programme (GSCP)を基に作成
  • *7農林水産省「HACCPとは?」を基に作成
  • *8Global Ecolabelling Network “What is labelling?”を基に作成
  • *9消費者庁「エシカル消費普及・啓発活動」を基に作成
  • *10IOC “Legacy Strategic Approach Moving Forward”を基に作成
  • *11EICネットを基に作成
  • *12気象庁「海洋酸性化」を基に作成
  • *13WWFジャパン「海洋プラスチック問題について」を基に作成
  • *14環境省「生物多様性」、外務省「生物多様性条約」を基に作成